大津家庭裁判所 昭和42年(少)1191号 決定 1967年10月14日
少年 N・A(昭三二・五・八生)
主文
この事件を滋賀県立中央児童相談所長に送致する。
同相談所長は少年をその行動の自由を制限し或は奪う強制措置の執れる教護院に入所させることができる。但し、その期間は入所の日から六月を超えてはならない。
理由
一、本件について滋賀県立中央児童相談所長からの送致理由
少年は、昭和四一年五月○○日以後その居住地附近で窃盗を重ね、且つ自己の通学する小学校でも窃盗をしたというので相談受理して指導中であつたが、その後も窃盗をしたので、再度触法行為相談の通知を受け、昭和四一年一一月一四日一時保護の上、児童福祉法第二七条第三号の措置により淡海学園(教護院)に入所措置を行つたところ、昭和四二年一月二二日右学園を無断外出して家庭に帰り、保護者は少年の帰園を拒否したので、昭和四二年一月二三日措置停止、同年三月一五日措置解除したが、以後家庭において養護中、兄のR・Kと共謀して窃盗をしたので、昭和四二年七月二六日から一時保護中であるが、少年は通告以外にも相当数の窃盗を行つていることが近隣者の話で窺われ、何等反省の色もなく、罪悪感欠如の状態であるのみならず、両親は各自勝手な生活を営み、少年の養護に欠けること多大である。
二、右相談所長の少年に対する処遇意見
少年法第一八条第二項により国立教護院武蔵野学院に強制措置が適当と思料される。
三、本件関係の一件書類によると
(一) 前記滋賀県立中央児童相談所長の本件送致理由中の各事実
(二) 少年の知能程度は平均知と見られるが、情緒極めて不安定で、行動に奔放さが強く自制力に欠け、あきやすくて持続性にとぼしく、性的関心、性衝動の強さが窺われ、人間関係の中にあつては、非協力的で破壊衝動がはげしく、家庭環境からの抑圧強迫刺戟も高いが、これに対する嫌悪感反抗性が強く、両親との間に親和性が薄いこと
(三) 少年の通学小学校での学校補導の限界外にあること、又児童相談所に一時保護中に異常悪質な行為を敢行していること
が認められるので、少年に対する在宅保護乃至開放的施設である右淡海学園における保護育成は著しく困難であると考えられる。
四、よつて、少年をその行動の自由を制限し、或は奪う強制措置のとれる教護院に入院させてその安全、養護を図る必要があると認められるので、少年法第一八条第二項により主文のとおり決定する。
(裁判官 坂本徳太郎)